四字熟語で小話⑩ 一意専心
自らの発想力のなさを嘆いた結果、四字熟語から思い浮かぶ事や物、小説風のものまで思い浮かんだことを書いていく。第10回
今回は幼馴染のお話。長くなっちゃいました。そしてまとまってない~
『一意専心』
うちの隣に住んでいる幼馴染の誠くんは、ちょっと変わっていると言われている。
学校から帰ると、いつも部屋にこもって何か作っている。
「オタク」なのだと私のお姉ちゃんが言っていた。
私は誠くんが嫌いではない。
誠くんの部屋に遊びに行っても特に話をするわけでもない。
私は私で自分の宿題をしたり、絵を描いたりしながら過ごす。
誠くんは脇目も振らず何かを作っている。
その距離感や空気感に、むしろ居心地の良さを感じていた。
それに、誠くんは話しかけたことに対してはきちんと答えてくれる。
その答えが他の友達が言う上辺だけのものではなく、本質を突いていて、いつもはっとさせられた。
誠くんは、人とは違う何かを持っていると私は思った。
月日が経って、私は高校受験勉強が忙しくなり、誠くんとも疎遠になった。
たまたま帰り道が一緒になったときに、誠くんに
「高校どこ受けるの?」
と聞いてみた。
誠くんは
「別にどこでもいい。ぼくがしたいことは一つだから。」
と言った。
久しぶりに話した誠くんは、いつの間にか声も少し低くなって背も私より高くなっていた。
私と誠くんは同じ高校の別の学科に通うことになった。
誠くんはどこの部活にも入らず、直帰していた。
高校でも、同級生から変わり者扱い、無視されたり。
私は年頃もあって、そんな誠くんを疎ましく感じるようになった。
誠くんだけが何も変わらない。
周りを見ない。
世間と交わろうとしない。
自分の世界で何かを作っている。
私は自分の部活や交友関係が忙しくなり、誠くんを見かけることもなくなった。
高校3年生になり、大学受験が迫りみんなそれぞれの進路で行き場のない迷いや葛藤や焦燥感が漂っていた。
そんな時、誠くんが廊下で先生と話をしているのを見かけた。
先生は遠目にも興奮冷めやらぬといった感じで、誠くんに何やら熱っぽく話をしていた。
誠くんは私に気づいたのか、先生を制してお辞儀をし、私の方に走ってきた。
久しぶりに見た誠くんは、さらに背が伸びていた。
「久しぶりだね、誠くん。どうかしたの?」
話し出すのはいつも私の方。
「僕が家で作ってたもの知ってるでしょ。それが国際的に認められて表彰されることになったんだ。先生は最年少受賞だって喜んでて。僕、そういうの苦手だから逃げてきた。」
「え!それってめちゃくちゃすごいことなんじゃないの!?それに、私実際に誠くんが何作ってたかなんて知らないよ。見てただけ。」
「でも、僕は見ててくれたから嬉しかったよ。だから頑張れたんだ。完成したら一番に知らせようと思ってたけど忙しそうだったから。」
「・・・なんか、誠くんとこんなに話すの初めてじゃない?昔は遊びに行ったりしたけど、あんまり話してないし。」
「・・・そうかな?僕は一番話してるし知ってくれてると思ってた。」
「・・・・・・本当、変わらないね。誠くんは。」
誠くんは不思議そうな顔をしていた。
その後、誠くんが作っていたものの話(正直私には難しくて良く分からなかったが)や、私の進路の話を誠くんが聞いてきたり、私たちはこれまでの時間を埋めるように話をした。
誠くんは、やっぱり他の人とは違うものを見ている。
そして、どうしようもなくピュアで世間知らず。
記憶力が良くて、昔話した他愛もない話ですらも覚えていた。
「昔さ、これが完成したら結婚しようって言ったこと覚えてる?」
唐突に誠くんが言った。
「僕、高校卒業したら、アメリカで研究することになったんだ。その・・・もしよかったら一緒に来てくれないかな。僕と。」
思考が止まる。
「何?それってプロポーズ?そんな子供の時の話なんて覚えてないし。そんな突然言われても。誠くん勝手だよ。私のことなんか見てなかったくせに。」
感情があふれ出す。
私はその時、本当に誠くんと自分の決定的な違いを認識せざるを得なかった。
全てが遠い存在に思えてしまった。
私はその場から逃げ出していた。
つづく(どうしよう・・・まとまるかな・・・スミマセン)